七月号最後の記事を仕上げる。毎月連載しているミステリ小説に因んで、当月テーマを決めて関連の本(八冊)を紹介していくという趣旨のコーナー。本当はこういうミステリの詳しいライターに振り分けたいが、最初の何本はやはり自分で書かないとコーナーのイメージが固まらないし、発注しにくいのでまず自分でと。
さて、今度のテーマは「閉ざされた空間」、要はクローズドサークルものだよな、そして「館」も入っている。こういうジャンルが好きなんだが、「詳しい?」といわれるとそれはまた程遠いので、苦労するわけだ。(と言うより本当に詳しいジャンルはないんだよ、手当たり次第に読んできただけだから)
悩みに悩んだ末、これらの作品をピックアップ。
- 殺しの双曲線 (ジョイ・ノベルス)/西村京太郎
- 星降り山荘の殺人 (講談社文庫)/倉知淳
- ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)/東野圭吾
- 殺意の集う夜 (講談社文庫)/西澤保彦
- 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)/島田荘司
- 人狼城の恐怖〈第1部〉ドイツ編 (講談社文庫)/二階堂黎人
- 時計館の殺人 (講談社文庫)/綾辻行人
- 鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)/京極夏彦
欧米ミステリに関する認識は本当に乏しく(知識として少し齧った程度しか)、時間もないので日本ミステリに逃げた。実を言うと八冊の中でも三冊しか読んでないよ、私。こんな無責任極まりない「おすすめの本コーナー」は果たしてあっていいのか?と自分自身に問うが…まあ、前回の「フーダニット」なんか欧米中心でやってたから読んだのが一冊もないと比べてまだ全然いいか(納得すんな!)
うむ、読んでもいないのに、集めた資料頼りに何回も読み返したと思わせる記事を短時間で書くのが、本当は得意なのだ…なぜかというと昔アニメ雑誌で記事を書く時、広報資料のみで、映像も何もない状況で何度も鍛えられたから(おいおい。自慢か?)
読んだ三冊(1、3、5)の中では、「斜め屋敷の犯罪」が一番好き。原因はやはりその大げさ過ぎでもう「本格のロマンだ」と呼ぶしかないトリックに圧倒されたところ。大学の頃先輩の勧めで「占星術殺人事件」を読み、以来島田氏の作品に関心を持つようになったが、吉敷シリーズはまだいいが、「暗闇坂の人喰いの木」や「アトポス」を読んで「(なんか事件ではなく事故ばかりで)もう島田荘司結構です」と落ち込んでいた頃、偶然「斜め〜」を古本屋で買い、「やはり御手洗潔はいいな」と改めて振り向かせた一冊。その影響で「ダンス」や「挨拶」なども買ってしまった。
「斜め屋敷の犯罪」がないと、自分のミステリ歴に「島田荘司は卒業した」と書くところだった。私的には大変重要な一冊なのだ。
読んでない作品について。「殺意の集う夜」と「時計館の殺人」は読みたいな。西澤作品は前から読もうかなと思っていたし、「犯人が主役で推理する」というコンセプトも面白そう。「時計〜」の方は今回の記事には「館」を延々と語ったのに、綾辻作品は「霧越邸殺人事件」しか読んだことないのもあれだから、という以上の理由。6と8については、多分よっぽとの事情がないと読まないでしょう。京極堂シリーズ(便宜上でこう呼ぶ)は面白そうだが、ぶっ厚すぎるのが弱いので。
「鉄鼠の檻」本当にすごい、読むべきだ!
先輩!背表紙幅5センチの小説は、人に読まれるために存在しているとはどうしても思えないよ〜(泣)