Skip to main content

ブームはだいぶ落ち着いてきたけど、去年 Twitter でいくつか台湾タピオカミルクティー関連の豆知識や、台湾人からすると不思議な日本で見かけたタピオカドリングを記録してきたので、ここで一回まとめようと。とりあえず『月曜日のたわわ』で有名な比村奇石さんに引用されてプチプチバズった「BOBA TEAの語源と今」からと。

タピオカミルクティーの呼び名は中国語で二種類ある。一つは「珍珠奶茶(ジェンジュー・ナイチャー/Pearl Milk Tea)」で、もう一つは「波霸奶茶(ボーバー・ナイチャー/Boba Milk Tea)」。たいていは「珍珠奶茶」で通るが、タピオカのサイズが選べる店では、「珍珠」は小さめな通常サイズで、「波霸」は大粒タピオカとなる。去年日本で流行り出したのがどちらかというと「波霸」のほうだね。

ところで、この大粒タピオカ入りの「波霸奶茶」だが、直訳すると「デカパイミルクティー」になるのだ。ええ、巨乳ミルクティーみたいな。

八十年代中盤までは「珍珠奶茶」、直訳すると「パールミルクティー」だったが、遡れる資料からは1988年、台南市にある屋台「草蜢」が「うちのタピオカは(パールより)でかい」との意味を込めて、当時は巨乳で中華映画のセックスシンボルとして君臨する、香港出身の女優さん葉子楣(エイミー・イップ)のあだ名「波霸」を、「珍珠」の代わりにメニューと看板に書いたのが始まりとされる。

エイミー・イップの写真を探してこようとしたら、ロクなものがないので、拾った『バストロイド』のポスターを貼るよ。手前左は青山可知子(日本)で、右はエイミー・イップ。後ろは台湾出身の許曉丹。

日本でもパッケージ化されたから、アマゾンで拾ったレンタルビデオ版のジャケットも。この作品は長らくお色気バカ映画とされてるけど、いま見るとサイボーグ化やAI搭載セックスロボットなど、銃夢ばりの実に先取り過ぎたテーマ扱っていた。映像はYoutubeで「Robotrix」で検索すれば、いろいろと引っかかるから略。

さてエイミー・イップのあだ名 「波霸」について。香港の広東語の口語表現では、英語の発音そのまま当て字にしたのが多く、「Taxi」は「的士(テクシー)」で、「Store」は「士多(シトー)」とか。書き言葉でも使う。

「波(ボー)」は「Ball」の当て字だとされ、「Boobs」とも転用される。つまりおっぱい。そして「霸(バー)」とは支配、占領、治めるとの意味で、要は「おっぱいを持って天下を取った」と……天下布ぱい……いや、なんでもない。

もともと「奶茶」の「奶(ナイ)」というのは、中国語で「乳房」の意味もあり、おっぱい繋がりで「波霸」が付けられたと思われる。こうすると別にタピオカのサイズが大きいではなく、(同じ値段で)容量が多いか、ミルク味が強いとの意味だったかもしれない。高雄出身の友人は「小学五か六年生の頃(1985年前後)はすでに『波霸奶茶』がある!」と言い張ったが、八十年代の屋台事情だから検証は難しいと思う。

のちに「通常サイズのタピオカは『珍珠』、大きいタピオカは『波霸』」と定着させたのが、おそらく早い時期から大きさの異なる二種類のタピオカを提供してきた50嵐(1994年設立)の影響。店舗数第二位の大手ドリングスタンドのチェーンブランドでもあって、その呼び方がそのまま全台湾に定着させたようだ。

タピオカミルクティーを英語版Wikipediaで調べると「Bubble tea (also known as pearl milk tea, bubble milk tea, or boba)」が出るように、英語圏では紹介した時期によっていくつかの呼ばれ方がある。最初に呼ばれ、一番浸透した「Bubble tea」が実はシェイクアイスティー、「泡沫紅茶」との混同だが、まさかそのまま定着してしまった。「 Pearl milk tea」は「珍珠奶茶」の直訳。2000年頃に、Los Angeles Timesで「波霸」の中国語の発音からの当て字「Boba」として紹介され、そのあとは十数年間も使われた。

時は2018年、「Boba」ついにオックスフォード英語辞典に収録された。紹介文には「台湾起源」と書いてあるので、台湾ではちょっとしたニュース。「Boba tea」とも表記するとし、「Bubble tea」と同義とされる。

「デカパイ」を意味するエロ用語で、英語「Ball」に「Boobs」から取って、八十年代の香港に生まれた「波霸」が台湾に入り、「デカタピオカ」を指すドリンク用語として定着。そしてタピオカドリンクと共に英語圏に渡り長い年月を経て、オックスフォード英語辞典に「Boba」として収録。実にどうでもいい豆知識だが、なんだかロマンを感じるよね (*´ω`*) 

というわけで、その後アジアを中心に、世界中の物好きがふるって参加する「タピオカチャレンジ」ブームに発展した、比村さんの『手放しタピオカ』の描写は語源に完全合致する「波霸奶茶」のあるべき姿だと、ここで付け加えよう。

世界はひとつ! 以下略!

elielin

数年前は東京でアニメ制作進行をやってた台北在住の台湾人編集者です。おたくでもギークでもないと思うけど、そう思っているのがお前自身だけだと周りから言われています。時々中野区に出没。

コメントを残す