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乱筆乱文など

テコ入れの法則

  2005/6/57月 7th, 20222 件のコメント

某番組を正面から叩き切ってやりたいので、いろいろ資料と情報を集める今この頃。そこで登場した「テコ入れ」という単語がよく分からなく、少し調べる…だけのはずが、言葉自体もその使い方もなかなか面白い。思わずめり込んでしまった。
しまいにはてなでキーワードを作ることにまで発展。記念にこちらも補足を入れて、メモとして残そう。
まず「テコ入れ」とは何かを調べてみた。てっきり何かしらの略語だと思っていたが、普通の日本語だった。大辞林第二版によると、以下のように二つの解釈がある。

てこいれ大辞林第二版

  1. 相場の勢いを人為的に操作すること。特に、下落を食い止めること。
  2. 不振を打開したり、弱い所を強化したりするために外部から援助すること。

つまり「テコ」とはテコの原理のテコで、漢字は「梃子」と書き、物を動かす時に使う棒のことである。テコ入れは「梃入れ」とも書く。一般的にはテレビ番組や連載作品の人気が低落していく時に、もう一度人気を取らせようと、起死回生を狙う措置のことを指す。つまり要はカンフル剤を打つみたいなモノかな。
ただし、テコ入れをすればなんとかなるモンではない。大多数の場合、そのまま打ち切りに繋ぐのがオチなんだが。ただ「どうせ打ち切られるから諦めろ」ということにはできないのが、テレビ番組や連載モノの悲しい宿命で、どんな苦い思いをしても、死ぬまであがいて見せないと、なかなか収拾がつかない。よってテコ入れしても失敗した場合、最後は支離滅裂な展開と無残な結末を抱え、「あの時はなぜあんなことをしたんだろう…」と悔まれる運命に辿るしかない。
ついでによく見かけるテコ入れのパターンについての整理もしてみた。悲しいテーマだが、まとめることには楽しい作業だった。緊迫な劣勢に陥ると、皆同じような藁を掴もうとするね。

よくあるテコ入れのパターン(テレビ番組)

  • 一般
    1. とにかく女の子を増やす
    2. 水着のオンパレードで露出度を上げる
    3. グルメ情報を入れる
    4. 占いコーナーを作る
    5. 動物子供を出す
    6. 視聴率の高かったパートを全面的に押し出す
    7. ダイエット法・健康法・子育て法を導入
    8. 司会者交代
    9. レギュラー入れ替え
    10. 番組のタイトルを変更
    11. 賞金賞品付き番組にする
  • 番外
    1. Ⅴ3を呼んでくる(仮面ライダー
    2. 大食い王選手権をやる(TVチャンピオン/時期限定)

結局お色気作戦だね、真っ先に頼るのは。人間の性は逆らえないようだ。並べるとややバカバカしく感じるかもしれないが、一つ一つ全部人気の取れる裏付けがある要素だった。
しかし、ただ人気を取るために人気の要素を並べていくのは、素人にもできる芸当で、プロがむやみにやってはいけないなと思うが。また、「ねるとん紅鯨団*1のように、テコ入れ策によって確実に人気を引き上げたのは良いが、最終的に全く別モンの番組になっていたりして*2。このようなテコ入れ劇の中には、揺らめく番組制作者の理想と現実が垣間で見れるような気がする。

よくあるテコ入れのパターン(漫画・アニメ作品)

  • 一般
    1. とにかく女を脱がせてみる(少女漫画は男)
    2. パンチラからエッチまでのお色気シーンを追加
    3. 新キャラクターを投入
    4. 現在の敵や困難をあっさり解決し新章開始
    5. トーナメント戦がはじまる
    6. 女性キャラのロリ化
    7. 女性キャラの巨乳化
    8. 少年キャラのハンサムボーイ化
    9. 死んだ敵や味方が甦る(or実は死んでませんでした)
    10. 新武器発見や新必殺技を編み出す
    11. メインキャラが(レベルアップのための)修行に入る
    12. メインキャラの誰かを殺してみる(あとで復活可能)
    13. メインキャラの誰かが実は宇宙人だと告白
  • 番外
    1. 飛燕に戦わせる(魁!!男塾
    2. 和食屋なのに急に洋食を作り始める(料理漫画/逆あり)

「この人はたぶんジャンプ系やマガジン系の漫画が好きかな…」と思ったあなた、ご明察。その通りです。すみません。
テレビと比べて、漫画の方はもっと厳しかったような気がする。企画段階ですでに放送コードや役者などの制限で、物事を進行させないといけないテレビ番組より、漫画は比較的に自由な範囲内からスタート可能なメディア。逆に言うと、最初からどこへでもいけるので行き詰る時は本当に逃げ場が無い、ということになるのだ。
かなり茶化もしたが、テコ入れとは危機処理の一環だけではなく、過酷な限界の中で新たな躍起を求める、最終的には進歩に繋ぐ可能性を作り出す一つの手段だとでも私は思う。テコ入れの必要な状況に陥った時こそ、己の本質を見極め、先人の知恵を噛み砕き、新しい何かを生み出す絶好のチャンスかもしれない。

*1:1987〜1994年間フジテレビで放送した番組。元々「上海紅鯨団」という番組だったが、視聴率が取れずにテコ入れの為にとんねるずを司会に投入。内容が全く違う番組になった以上、タイトルも意味不明、だけどこれで大ヒットしたから何も言えない。

*2:90年代以降の日テレの娯楽番組全般に言える傾向。そして最近の代表は「エンタの神様」。最初は歌とマジックとお笑いなど、「娯楽」要素がすべて内包しようとする作りだが、途中から全面的にお笑いに転向して成功し、「お笑いの神様」に改名した方がいいと思われるような番組になって、現在はそんなに笑えなくなったと感じるので、自分の中では「お笑いの王様」がお似合いだと。

elielin

数年前は東京でアニメ制作進行をやってた台北在住の台湾人編集者です。おたくでもギークでもないと思うけど、そう思っているのがお前自身だけだと周りから言われています。時々中野区に出没。

2 件のコメント

  • mandanatsusin より:

    いやー、テコ入れってそういう意味だったですか。知りませんでした。勉強になります。日本語の話題なのでわたしもひとつ。「カンフル」(campher, camphor, camphora)は樟脳(ショウノウ)のことで、クスノキからの抽出物です。現在も防虫剤やシップ薬として使用されていますが、過去には風邪のときの飲み薬として使用されたこともあります。強心作用や呼吸刺激作用があるので、瀕死のヒトに注射されることもありましたが、救命効果がないことがわかり現在は使われなくなりました。というわけで、日本語の使用法としては、「カンフル剤を打つ」が正しいようです。

  • elielin より:

    なるほど。ドリング剤みたいなモノだと思っていました(汗)教えてくれてありがとうございます。訂正しました♪

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