郭台銘(Terry Gou)会長の強い意志により、フォックスコン関連企業が集結し、富佳生技というメーカーを立ち上げて緊急開発した、噂の家庭向け PCR 検査装置がまさかのわが家に。検査キットもタダでもらえた。つまりテスター。そんで初めての PCR 検査。ドキワク。
使ってみた感想を単刀直入で言うと、実に郭会長的なマシンだった――必要なものと段取り以外一切なく、余計なデザインや飾りを排除した簡素、シンプルすぎで子供のおもちゃに見えるほどだけど――本当はハイテクの詰まった高機能マシンだった。
ざっと仕組みを見てみると、検査キットはマシンと別になっている消耗品。まずマシンを購入し、需要に応じて検査キットを買う、ビジネスモデルは今時のプリンター商法となるか…とぱっとみ思うけど、強制的にネットに繋がらなければ動かないところで、ちょっと期待が膨らませる(後述)
PCR だから、パーツは抗原検査キットより多いが、そんなに多くもない。画像にある6種類のパーツに、操作前にマシンをきれいにする小さなアルコール除菌シート1枚。これらだけ。検査前に全部取り出して机に並べれば、操作時にはあたふたしない。
赤い檢體杯(検体入れ)には QR CODE がついていて、途中でカメラの前にかざしてスキャンするようにと求められる。たぶんシリアル番号だろう。マシンは WIFI を通じてネットに繋ぎ、検査結果を登録のメルアドに送るのほか、開発会社のデータベースにも登録されるとの仕組み。
分析儀(マシン)自体は不思議に軽く、軽すぎで驚いたぐらい。アダプターや電源ケーブルを足してもなんと2キロ以下。もっとも重要な加熱、冷却など検測機能はもちろん、タッチパネル、Wi-Fi、音声(動画)ガイド機能に QR CODE スキャン用カメラなども搭載し、小さくて軽いミニコンピュータでもある——ミニすぎで、マジで検査できるのかと疑うほど——これが素人の杞憂だと、約2時間後に証明できたけど。
画面に出てくるガイダンスに従い、初めての PCR 検査を自分の手でいい感じで進められた。段取りは多くないけど、やはり初めてなので、滞りなくとは言い難い。それでも2時間内で簡単にできた。
ただ前に新聞記事で「 75 分で結果が得られる!」やら「 60 分で検査できる」などと読んだけれど、実際はそこまで速くはできない…不活性化に 12 分、薬剤が溶けるのには3分待ち,メインディッシュ(?)の検査は 70 分間かかるので、操作時間を加えて 75 分とは、さすがに無理だよね。
まあ慣れれば1時間半(90 分)ぐらいはできるのだろうけど、記事はみんな大げさに書いちゃったかな。しかし実際、このマシンの存在を置いといて、台湾の今現在でも指定医療機関以外のところで PCR 検査できない状態では、結果は翌日以降だと承知で病院まで足を運び、PCR 検査をするのにどれぐらい待たせるのを考え、往復の時間も足してみると、2時間弱で結果が得られるなんて、もう神速だろうよ。
実際1時間 46 分…うん、106 分間かかった。検査結果は「未檢出」=陰性。えへ。
そして仕組みはよくわからないが、モニターに検査結果が出て来る5分前に、通知メールはすでに登録したメルアドに届いた。どでかい QR CODE は、おそらく検体入れのシリアル番号だろう(確認するのを忘れた)…一番下に「到期時間」(有効期限)があって、いつ次の検査をすべきかとやんわりと提示する意味なのか?(天の声:中国に住んでいたら、たぶんそれな)
一通り流れを書いたので、感想をまとめよう。操作は簡単、段取りも少なめについてもう改めて書かないから、まず欠点。「蓋。が。硬。い」と。プラスチック試験管でも検体入れも、說明ガイダンス動画には親指でちょっとぐっと開けるはずの蓋が、なぜかワタクシの手ではちっとも動かない。変な話なぜかこの蓋開けが一番手こずった段取り。
あと「手」だと言うと、いくつかの段取りは両手で行う必要があるため、音声ガイダンスが終わってすぐタッチパネルに「次へ」が出てくるのを見て、まるで「はよ押せ」と催促された感じで緊張したりするね——これはユーザー自身が慣れれば済むかもしれないが、やはりもう少しユーザーに優しくできる余地がある気がして。
続いては素晴らしいと思うところ。もともと噂によれば「鼻腔粘膜、口腔粘膜、唾液」とも使える三位一体検査装置として開発を進んできたから、今のところ国からは鼻腔粘膜の許可しか降りてないけど、将来は検査キットさえ変えれば、口腔粘膜や唾液の検査もできる点が、将来性が大いにあると。この先には口腔粘膜用に「新型コロナウィルス検査キット・チョコ味」が発売されてもおかしくない…か。また将来(あるいはすでに?)同じ流れで検査できるウィルスがあれば、このマシン1つで違う検査キットを使えば済む、とのことかな。
そして一番すごいと思うところ、あるいは優勢。それはネット接続機能がもたらす、少なくとも2つの利点は期待できる。
1つめの利点は検査結果をお手軽に同期できること。仮にこのマシンは1家1台のレベルにまで普及したのならば、検査結果は登録したメルアドや開発会社に送る以外、ちゃんとデータベースを組めば、政府や地方の医療機関、学校や空港や海港などにも同期できるはずで、行動制限をかけるにしても、より精確にできるし、国境開放にもやりやすくなるはずだ。
例えば上海の今回のロックダウン。もし1家に1台このマシンがあれば、ロックダウンの時間が短縮でき、あるいは最初からもっと緩やかなやり方で行動制限をかければいい——誰は誰だかは QR CODE のシリアル番号で特定できるから、家庭を単位にしても、検査したのがどの家の人かはわかる——自宅で検査して結果が陰性だとお出かけOKで、誰も家から出れない状況が免れるのだろう。中国で施行してきた健康コードと連携すれば、そんなに難しいことではないはずだ。感染した人も、こういう家庭向けマシンで早めに発見し、政府から大白(白衣の防護服を着込んだ作業員)を派遣して再検査や収容の手配をすればいい。
まあ…ただここまで完全管理社会となるのも、かなりディストピアだけどね。
で。台湾でやれるかどうか。それはよくわからない。なぜならば抗原検査キットの輸入と販売でさえ、台湾は今でも管制しているからね。こんな便利なものをもっと便利にしたり、利権関係にトラブルあるんじゃないの?唾液の抗原検査キットもほぼ特許専売みたいになっているし(メディゲンの関連企業に独占されている状態)
それらを置いといて。
2つめの利点はビジネスモデル。最悪はプリンター商法だけど、このマシンは「Wi-Fi によるネット接続機能がある」というよりも、「ネットに繋がらないと動かない」ように作られているから、これでソフトの自動更新ができる以外、待ち時間内に動的な広告が流れる——本体を低価格、いっそ無料でばらまけても、流す広告を売って収入源にできる。
うまく行けば、検査キットでさえ無料で配れる。広告が嫌、あるいは自分の流したい音楽や動画を流したければ、お金を払って購読し、検査キットも定期的にご自宅へ届きます——みたいなのもできる。
しかしその前提は、この新型コロナウィルスが永遠に消えず、人類にとってずっとインフルエンザ以上の危害があって、だから毎日歯みがきしないといけないように、2日3日で PCR 検査をする必要が――
待てよ。それはちょっと嫌だな (´;ω;`)
これも見るといいよ
ちょうど先週のことだが、郭台銘会長にこのマシンのあれこれを聞いたテレビインタビューが放送された。また郭会長のほかにウィルス検査の専門家が2人も同席し、開発の動機や経緯、台湾や世界の感染状況への分析なども言及し、実に豊富。ただし中国語。計4回でもしご興味があれば(1/2/3/4)