イスラエルのオレグさんのヘブライ語組曲完成版*1ができたので、今日こそ前の人生ログで宣言した(オレグさんから聞いた)イスラエルのオタク文化などなどをまとめようと思ったが、オレグさんとのチャットログが実家に残してきたと気付き、激しく落ち込む(おいおい日本語変だぞ)…また日を改めよう。ごめん、オレグたん。
で、せっかく落ち込んだから(意味不明)、ならとことん落ち込んでみようではないかと、ちょっと自虐で書いてて落ち込んでしまうネタを一つ。
もうちょっと前の人生ログで言及した「中国の同人音楽」の件を。
最初は年末だからニコ動で有志が作成した「紅白ニコニコ歌謡祭」を何気なくBGVとして流していたら、歌謡祭03でなぜか中国語が流れていたとびっくりして、検索をかけてみたらコレが出てきた。
曲名は『Times Flowing Through』で、なんと中国のオリジナル漫画作品『魔法超校生(Phantom Driver)』*2の同人ラジオドラマ用主題歌*3だった!同人ラジオドラマ!?同人イベント歴史が10年にも及ぶ台湾でも香港でもあまり見ない同人活動の形式なのに、「どれぐらい進んでるんだ中国?」の感覚で、さらに深く掘り下げてみた。検索魔なので。
そして絶望した。ええ、台湾にいる自分に。もうヤダ。
中国は進んでる。*4
精確で言うと、進んでる人のとてつもなく進みぶりで落胆した。モー娘。のリンリンジュンジュンそういう「留学生よえへっ♪」なレベルじゃないほど進んでいる。
歌い手のkkryuさんは1985年生まれ、日本語ブログもお持ちで発音もすばらしい。自称「アニメ声優を目指してる中国娘」で、中国のネット界隈でかなり有名な同人声優さん。近頃はニコ動も出没。またブログの記事によると、最近も中国で声優の仕事を請けられるようになったそうで、いろいろと活動しているようだ。そしてそのブログからリンクをたどって彼女が主催するハガレンの同人CDドラマ促販サイト「RE- 〜最初の場所へ」に訪問。まずびっくりしたのが、彼女は企画、脚本を担当し、日本語の同人主題歌(徹底的だ…)の歌詞も書き、肝心なドラマではなんと一人三役(エド、アル、ウィンリィ)!さらにおそるおそるサンプルというか予告*5を聞いてみると、驚くことに中身はフル日本語だった…!男の子たちの日本語がややたどたどしくてなければ、素人のラジドラではわかるが中国産だと気付かない可能性もあったりするのではないかと思った。
これぐらいのことをやる同人声優やサークルは日本でそう珍しくないが、そこは中国。「外人なのに日本語は上手だ」や「日本アニメの影響力ってすげぇな」や「どうせパクリ国家で海賊版ばかりだろうかフハハハ」に留まって思考停止するのではなく、彼女たち――ひとりの個人ではなく、集団に成すぐらいの異国の若者たち*6はどこに向けてがんばっているのを、考えていただきたい。
日本ではアニメが好きで、声優を目指す子には目標がはっきりしている。すなわち(当たり前だが)日本アニメの声優としてデビューし、仕事をもらい、ファンを増やすことだ。しかし、中国で日本アニメに育てられた子は、同じ目標が目指せない。中国では「日本アニメ」が作れないから。この点は台湾も香港も同じだ。
ネットが普及する前は、自然に諦めて、自国で何とかしようと思うかもしれない。でもいま、「日本アニメの声優」になりたかったら、日本語を勉強し、自国にいながら日本人に向かって自分をアピールすることができる。これは声優志望者だけではない、YouTubeやニコ動や[pixiv]のようなサイトの出現により、日本のサブカルの影響を幼い頃から受けてきた外国のイラストレーター、マンガ家、アニメ作家、作曲家、小説家*7志望者までも当てはめることだ。
才能が目指す目標は、自国に定めない、定まらない現象が起きている。その国は前からその文化が(サブカルチャーとして)定着していれば、ただプロになる選択肢が増えただけかもしれないが、もともとでは定着していないとなれば、日本に向かって流動し(台湾)崩壊する(香港)。その流れを止める必要は無い、むしろ加速させるべきだと思うが、何かが変わり始めていることに、日本人は気付いていないし、実際やってる当人たちも、東アジア近辺の所謂業界人もそんなに自覚していないとも思う。
そう。いまは日本を中心に何かが廻っている。しかも取り込まれたがる形で流れ込もうとしている。でもその日本は心の準備さえできていないと見る。この流れをずっとキャッチしない、もしくは疎通しない(向かってくる何かがずっと報われず)ままで行くと、経済の格差という利点が利用できなくなる時点で、流れは無理やりでも中国に向かって廻っていき、逆に日本は巻き込まれる側になるのだろう。
なぜそういうことをいうと、実はkkryuさんの中国語の演技が気になってまた少し調べたら、面白いことを発見した。それは彼女が参加した作品が、中国のラジオドラマより日本語のラジドラに近いことだ。わかりやすい例はその日本語ブログにあるROの同人誌宣伝CMを聞けばわかるかもしれない。華語ラジドラの脈絡が見当たらなく、少しでも日本モノのテンションに近づけるようになっている。原因はたぶん華語のより日本語のラジドラをたくさん聞いているのであろう。実にうまく日本モノの良さを取り込んでいて、中国語のラジドラを日本風にアレンジできている、このまま進んでいけば、日本語で日本人も受けるモノは、彼女たちも作れるようになるかもしれない――しかしその逆は、日本人ができるのか。中国人がさらに消費力を持つようになるのだろうとの将来では、マーケットの大きさで流れが逆転する結論を出しざるを得ない。日本が今から何かやらねば、コンテンツ業界はなんだかんだ言ったって需要がすべてを決めるからね。
と、なんか自分の絶望を必死に日本全国レベルまで拡大しているようだ(苦笑)これ以上深く考えてしまうと、精神的にダメになる恐れがあるので、ここで打ち止めよう。最後は恒例で歌詞と適当な日本語訳を添付(スタッフ表記のリンクで歌手や作曲作詞者のブログに飛べる)。訳している途中、この歌詞は若者の書く中国語にしては美し過ぎで、国語崩壊の台湾を嘆きまた絶望してみる。とにかくよろしかったらどうぞ。
<div
style=”margin:1.5em 48px;line-height:1.5;”>蝉鸣蛩唱飘荡在田野
(蝉と蟋蟀の鳴き声が 野原に彷徨い漂う)
鸿雁结群展翅高旋消失在天边
(鴻と雁は群れを成し 翼を広げて空へと高く飛び去る)
飞雪曼舞催大地长眠
(飛雪がゆらりと舞い踊り 大地を長い眠りへ誘い)
一夜细雨敲醒沉睡的心田
(一晩の小雨で 深く眠る心を呼び覚ます)
用记忆纺染的丝线
(記憶で染め上げた糸を)
一重重缠绕 编织美丽的茧
(何重も重ねて 美しい繭に編み上げる)
紧紧守护着它 总以为这就是一切
(固く守り続けて それがすべてだと思い込み)
却无意 发现外面的蓝天
(外の青空に全く目もくれず)
春去秋来辗转的流年
(春が去り秋が来て 流れる年月は繰り返し)
潮来潮去总回到原点
(潮が満ち引きいつも原点に戻る)
不愿人生被束缚没有改变
(束縛されて変わりのない人生なんて望まない)
握起剑 去斩断那缠线的纠结
(剣を握りしめ その絡まる糸を断ち切る)
踏过岁月残留的碎片
(歳月が残した欠片を踏み)
抛开虚无伪善的眷恋
(空ろな偽善の想いを捨て)
让悔恨和遗憾随过去沉淀
(後悔も遺憾も過去に任せて沈ませよう)
冲破茧 去开辟出崭新的世界
(繭を突き破り 新たなる世界を切り開く)
*1:ほほう、ヨーロッパにケンカ売ってるぜ(笑)
*2:原作者はLing。中国の漫画雑誌『漫動作·少年誌GoGoTop』で2004年5月〜2006年3月の約二年間で連載した作品。何かあったのかよく分からないが単行本化していない。なのでかなりマニアックな部類に入る作品。にもかかわらず、同人ラジオドラマまでできている…すご過ぎ。Lingは1982年生まれで、今風の日本マンガというかアニメっぽい絵柄を持っている。現在は中国の漫画雑誌『漫友·可愛100』(有名な漫画雑誌『漫友』の萌え美少女特化バージョン)で『麻煩魔法使☆千葵』を2007年4月から連載中。2008年からまた別の新作があるらしいが、ブログ読むと今は『電脳コイル』の同人誌を売ってる…
*3:しかもkkryuさんのバージョンはカバー。オリジナルは同じく中国の同人声優Shakelightさんで、冒頭のセリフはロシア語になっている。作曲のShyujikouさんのサイトでDLできる。
*4:「台湾だって進んでるんじゃないの?」と思うかもしれないが、残念ながら台湾の声優関係の同人は、ぜいぜい日本アニメの映像を見て自分で吹き替えしたり、日本語のアニメソングやポップスをカバーするレベルで、完成度がここまで達するものは見たことがない。メイド喫茶によるメイドコスプレビデオは売っていると聞いてるが。だいだい同人音楽や同人ラジオドラマを作って活動する人数は2ケタいるかどうかもわからないし、自国の漫画原作を基づいたラジオドラマがなおさら聞いたこともない。あってもいいはずだが、あればぜひ聞かせてほしいものだが、ないからしょうがない。終始日本の真似で満足し、進まないのに足を引っ張り合う台湾の何だらかんだら…どうでもいい業界でも環境でもなにもかもに嫌悪感が込み上げる。ここから離れない自分もイヤになる。
*5:直リンクはまずいかなと思ってこのページに行ってクリックできるところを適当にクリックしてください。うちの一つはFLASHによる予告動画で、あと一つコミケは委託出展時のCMで、ここでも聞ける(kkryuさんによる日本語コメント付き)。
*6:声優や歌手を目指している中国の子たちが集まるフォーラムは多数存在し、kkryuさんまではなくても彼女に準ずる者も少なくない。
*7:知り合いには既晴という台湾の小説家がいて、兼業作家だが年に二冊は出している。ミステリーが書きたいけど、台湾ではうまく羽が伸ばせなく(台湾人は台湾人が書いたミステリーを軽視する傾向あり。ああ漫画もアニメも野球も同じだ)、逆にミステリーの知識が豊富なので翻訳モノの解説ばかり書かされてる。去年台湾に来た島田荘司さんに励まされ、現在は日本語を勉強して日本語で小説を書くとがんばっている。
いいえ、まだあまりはなしてなかったので、落ち込む理由もありませんwいつかまた話しましょうw。といえば、マヤとイキスもヘブライ語組曲を作ろうとしあすw
^とします
おおオレグさん〜♪教えてくれたことをもとに、いろいろと調べようと思いますので、ログがないと、私の記憶があまり頼れないものでorz
マヤとイキスのヘブライ語組曲ですか?わーお。オレグさんの完全版は楽しかったですし、これは楽しみですよ。『扉の向こうへ』の動画を見ててイキスのファンになりそうです(笑)
創作に最も大切なのは、内圧の高まりだと思うので、そういう意味で中国の人たちが感じている餓えは、比して圧倒的なのかもしれませんね。思い返せば1980年ごろの、日本のアニメファンが蓄積していた内圧も、実際、相当なものでした。
きくたんさん、お久しぶりです。内圧ですね、確かに。ダメと言われた「手に入れない何か」を求め、どうしても得られなかったから自分で作ろうとしたような気迫が内圧を高めていきます。それをいうと今の日本のアニメファンは満たされしすぎたかもしれませんね。
elielinさん始めまして、作曲のShyujikouです。
何かググって見たらこの文章を見つけて、拝読させていただきました。
中国の同人音楽に興味を持っていただいてありがとうございます。これからもがんばります。
Shyujikouさん、初めまして。文中には曲のことをあまり言及していませんが、イントロから導入部が好きです。特に「高旋〜消失在天边」のところがXD
時々そちらのホームページも見に行ってます。将来何か一緒にやれればいいですね(笑)こちらもがんばります。