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乱筆乱文など

社会派緊急特集③

  2005/1/87月 7th, 20222 件のコメント

緊急特集と言いながら、かなり間があくなこの企画…
さてさて、12月のことだ。厳密に言うと11月25日からのこと。東立、長鴻など台湾の大手漫画出版社のR-18指定書籍リストが公開し*1、農学社などの取次会社からも、書店向けにR-18指定書籍リストを各取引先に。誠品書店を筆頭に書店の大手チェーン店も出版社からのR-18指定のついでに、出版社の指定以外にまた独自的なR-18指定を実施…そして、混乱が起きた。
主要な怪現象を中国語の四字熟語付きで述べてみょう。

  1. 各自為政――業界全体のまとまりがない
      「各自為政」というのは、各セクションは個別に行動し、誰もコントロールできないということ。そう、一番大きな混乱はやっぱり、出版社、取次ぎ、書店、貸本屋がそれぞれ「自分なりのR-18指定」を出してしまったこと。出版社のR-18リストには載っていないが、表紙がパンチラ美少女だけで取次ぎのリストに引っかかったり、書店、貸本屋が勝手にR-18扱いにしたりする。また書店のリストでは、なんとR-18の意味を取り違い、「大人向け」をR-18にしてしまうケースもある。
  2. 寧可錯殺――書店、貸本屋の過剰反応
      たとえ無実の人を誤って殺しても、とりあえず疑いのあるやつは全部殺してしまえ…という意味*2。一番有名なのは誠品網路書店で、パソコンのプログラム言語関係本や経営管理関係本は「18禁」*3というキーワードで検索から出てしまうことであろう。そのほかに象棋(中国将棋)の専門書もかなりひっかかり、色彩研究書も入っていたりする*4。たぶん、書のタイトルのみで判断し、「色」とか「炮」とか、中国語では性的な意味が含んでいる言葉*5さえがあれば、とりあえず18禁にするじゃないかと思われる。大手チェーン店の代表格である誠品がこれをやってしまうと、漫画の読者に限らず、さすがに一般読者もこの「分級辦法」を疑いの目で見るようになった。さらに、店の半分スペースをR-18コーナーにするや、思い切って店の前に「18歳以下禁止進入(18才未満は立入禁止)」の張り紙を出す貸本屋も次々と出た。「取り締まれたら50万元(150万円ぐらい)*6もする罰金は払えない」という理由で、店を畳んだ貸本屋もあった。

  3. 不辨菽麥――出版サイトの不思議なR-18指定
      「菽」は豆、「麥」はそのまま麦の意味で、全く違う形をしている豆と麦の違いも判らないとは、ズバリ「愚かなバカ」という意味。また「常識の無い」、「判断力が無い」という意味でも使える。まあ、さすがに「愚かなバカ」は言い過ぎたが、出版社サイトが適正な判断を下す能力が不足だというのは多少合ってると思う。ざっと見ていけば、ロマンス小説の出版社は基本、エッチシーンが細かい描写であればR-18指定、男と男が愛し合う話なら問答無用にR-18。漫画出版社の方は台湾角川以外、内容より「絵」で判断する傾向が強い。つまりたとえ内容がどんなに明るく、どんなに向上のイメージが込めていても、素っ裸の女体、死体、殺人、殴り合い斬り合うシーンが多い作品が、R-18指定にされる可能性が高くなる(特に劇画調なもの)。
      しかし、あくまでも絵で判断しているので、変わった結果がでる。たとえば漫画出版の最大手東立出版では、「ジョジョの奇妙な冒険JOJO的奇妙冒險)」の第一部1〜6巻をめでたくR-18指定に…テーマは人間賛歌だけど、絵的な表現はB級ホラーだからかな?特に第一部(汗)*7しかしノリの似ている「北斗の拳(北斗之拳)」はリストに無い。同じく少年マガジンの「GetBackers(奪還屋)」も「SAMURAI DEEPER KYO(鬼眼狂刀)」もリストにないのに、「BOYS BE(新恋愛白書)」は32巻全部R-18指定、アングルがきわどいからか?*8また尖端出版の方も、人や仏像を輪切りしまくった「GANTZ」はR-18指定でいいが、「エルフを狩るモノたち(妖精狩猟者)」もR-18指定?もしかして、単にエルフの裸が多すぎるからか!?まさに不可解である。
      という具合で、同じ出版社でも指定基準が曖昧で、出版社同士の基準がさらに落差が。出版社はいったい何の基準で等級分けているのが見えない、出版社自身もどう分けていいのか分からない…これも書店の過剰反応に繋ぐ一つの原因だと考えられる。
     
    以下はまた次の更新で…(;´ρ`)
  4. 參差不齊――焦点が絞れない反対派
  5. 自掘墳墓――勉強をしない支持派
  6. 囫圇吞棗――レベルの低い議論が溢れる

*1:各出版社のR-18指定書籍リストまとめサイト(中国語)。
  http://anti-censorship.twfriend.net/books.html

*2:例を挙げると、中世の魔女狩りや、ドラクエ4第一章で、デスピサロが主導する子供狩りみたいなこと。勇者を殺すのは子供のうち…っていうじゃない?でも勇者は、イムルの村の裏の方に住んでいますから!残念!!まじめにやってるがマヌケなピサロくん斬り!

*3:実は「18禁」ではなく、「限制級」という表現が正しい。もともとをいえば、正しい中国語の中では「18禁」という言葉が無いはず。多くの人は「18歳以下禁止購買(18才未満は購入禁止)」の略だと思っているけど、どちらかと言うと、「18禁」は1990年前後のエロゲームブームに乗って正式的に上陸し、台湾PCゲーマーの間に広まった「外来語」だった(「15禁」も一緒)。その前にはそんな言葉が使われていなく、「限制級」を使っていた…これも「限制級」という言葉は、未だにマイナスなイメージが持っている原因であろう。だた十何年も経て、この度誠品網路書店が当たり前のようにその言葉をサイトのメニュに入れたのを見ると、「18禁」という「中国語」はもうゲームや同人誌などのサブカルの枠から飛び出し、市民権を得たと思う。

*4:現在はすべて修正された。

*5:「色」は「色情(エロ)」「情色(ポルノ)」などの言葉に繋がり、「炮(もしくは「砲」)」は男性の性器を指す隠語。象棋では「炮」というコマがあり、「五六炮對屏風馬」など「炮」を組み込んだタイトルがアダになり、エロ本と間違われたのであろう。ちなみに「馬」も性的な意味が持っている…んん、そう言えば「五六炮對屏風馬」は確かにエロっぽく見えなくもないね、しかもホモのほうに見えるよ…orz

*6:この高額な罰金は掲示板経由で広く伝えられ続けてきたが、実際に調べるとその正体は真っ赤なウソだった。罰金額はその15分の一もない6千元〜3万元(1万8千円〜9万円ぐらい)だと定められていた。兒童及少年福利法第55条参照。

*7:2005年1月10日、東立出版の公式サイトではないが、「ジョジョの奇妙な冒険はR-18指定リストから外される」という情報が蛙蛙書店のお知らせコーナーに出ていた。

*8:「BOYS BE」のような生殺しも同然な表現は、18才未満の読者じゃないと共感できないと思うけどな…

elielin

数年前は東京でアニメ制作進行をやってた台北在住の台湾人編集者です。おたくでもギークでもないと思うけど、そう思っているのがお前自身だけだと周りから言われています。時々中野区に出没。

2 件のコメント

  • buttw より:

    Boys Be…は過去何度も台北市議会の話題になったので(恐らく週刊連載で、イラストがエロっぽいから)、7年前からすでに18禁に指定されていました。

  • elielin より:

    そのことは知っています。台北市議会でのはよくわかりませんが、国会での騒ぎなら覚えています…確か1995年か1996年あたりのことで、同じ号に載ってある「金田一少年の事件簿」も散々言われました。バカげし過ぎで当時大学二年生だった自分は新聞への投書までやりました。ははっ、認めたくないものだな、若さ故の(以下略)話を戻りますが、「BOYS BE…」を挙げたのは、同じマガジン連載作品なのに扱いの差を提示するためであり、R-18指定されたのは今度なのか七年前なのかは、あまり重要なことではないと思いますけどね。

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